アイノラ交響楽団 第18回定期演奏会 ~Sibelius Religioso~
これは既に終了した演奏会です。日時: 2021年4月18日(日)
会場:
杉並公会堂大ホール
曲目:
ジャン・シベリウス:
交響曲 第2番 ニ長調 作品43
ジャン・シベリウス:
2つの厳粛なメロディ 作品77
チェロ: 棗 年紀
ジャン・シベリウス:
交響曲 第6番 作品104
ジャン・シベリウス:
フリーメーソンのための音楽より「行列聖歌」 (進め、主の御光) 作品113
新田 ユリ (正指揮者)
人生において避けることのできないもののひとつに、家族や大切な人の死があります。いつもそこにあった何よりも大切なものがある日突然失われる・・・そんな大きな喪失感に苛まれたとき、人はなすすべなく、ただ祈ることしかできない・・・宗教の出発点はひょっとするとそんなところにあるのかもしれません。
ヨーロッパにおいては、宗教と音楽が結合し、ミサ曲やレクイエムといった教会音楽が形作られました。ヨーロッパの中心から少し離れたフィンランドで生きたシベリウスには、そういった典型的な教会音楽はありませんが、ヨーロッパの教会音楽や古い旋法を独自の形で取り入れた宗教的な色合いを感じさせる作品がたくさんあります。そこで今回はシベリウスの“religioso”な音楽とは、をテーマにプログラムを構成しました。
イタリア旅行中に発想され、カトリック的な祈りのコラールを2楽章に持つ交響曲第2番。「聖歌」、「献身」のサブタイトルを持つ2つの厳粛なメロディ。宗教音楽の大家パレストリーナの音楽からの影響を受け、古き教会音楽の雰囲気を持つ交響曲第6番。フリーメーソンの儀式のための音楽として作曲された行列聖歌。
今回のプログラムはシベリウスの人生における死の克服、受容、そして祈りの物語でもあります。交響曲第2番は30代に書かれた前期の作品。愛娘キルスティの死の後に書かれていますが、基本となる調性は最も明るく輝かしいニ長調を選択しています。若き日のシベリウスにとって、死とは克服し、乗り越えるべきものだったと言えるのかもしれません。一方、他の3曲は50代以降に書かれた後期の作品。50代のシベリウスは2つの大きな死を受け止めなければなりませんでした。ひとつは最大の理解者で支援者であるカルペランの死、もうひとつは弟クリスティアンの死。作品もそれまでと違った方向へと変遷していきます。2つの厳粛なメロディは文字通り厳粛な雰囲気を持った作品。交響曲第6番は、2番と同じ「ニ調」でも、清澄でありながらほの暗いドーリア調。2人の死を受けて入信したフリーメーソンのために書かれた行列聖歌は穏やかなイ長調。大きな喪失感を味わったシベリウスにとって死とは乗り越えるものから受容するものへと移り変わっていったのかもしれません。そんな2つの時代のシベリウスの祈りの音楽を是非お楽しみください。
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