新交響楽団 第265回演奏会


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これは既に終了した演奏会です。
日時: 2024年4月21日(日)
会場:
東京芸術劇場コンサートホール

曲目:
デュカス
 交響曲
ラヴェル
 高雅で感傷的なワルツ
レスピーギ
 交響詩「ローマの松」

指揮:
   矢崎彦太郎

【「ローマの松」とローマ街道1号線】
 オモテ面の地図はローマのアッピア旧街道に沿って地形図を切り抜いたものである。1km方眼の傾きは南東を向いた街道に合わせたためだ。古代ローマ帝国(共和制を含む)が広大な版図に張り巡らせた街道は10万kmにも及ぶ。構造はこぶし大の礫から砕石、セメントに至る何層にも重ねられた上に石畳で舗装した2車線の車道と、両側の歩道を備えていた。コースは地形をほとんど顧慮することなくどこまでもまっすぐなのが特徴だが、アッピア街道はその最初期に建設されたものである。その名はローマのケンソル(高位政務官)であったアッピウス・クラウディウス・カエクスに由来する。ローマの城門を出た直後から20kmほどひたすら直線コースが続く。

 レスピーギ(1879-1936)の代表作「ローマの松」は4部に分かれ、それぞれ「松のある古代ローマの風景」を描いている。ボルゲーゼ荘の松、カタコンバ付近の松、ジャニコロの松、そして終曲がこのアッピア街道の松である。1924年の初演から今年でちょうど100年、「1号線」たるこの街道の開通からはすでに2300年以上が経過した。現在も古代さながらの石畳道を、馬車ならぬ自動車が行き交っているが、レスピーギは「別働隊」のラッパとオルガンが鳴り渡る壮大な音響で、遙か昔の世界帝国の空気を描いている。

【ラヴェルは当時の「前衛作家」だった】
 ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」はサル・ガヴォーというピアノ製作会社の名を冠した小ホールでピアノ曲として初演された。「独立音楽協会」の催しで、誰の作品か事前に知らされない聴衆が作曲者を当てるという趣向。正解者は多かったものの評価は今ひとつだったという。「正統派」であった国民音楽協会を脱退して「現代的な音楽の創造」に寄与すべく立ち上げられた独立音楽協会のコンサートで、耳の肥えた聴衆が多かったとはいえ、その前衛ぶりについて行けなかったのかもしれない。曲は緩急8つのワルツからなり、翌年にはバレエ音楽としての依頼によりわずか2週間でオーケストラ用に編曲されたという。色彩感溢れる表現が聴きどころである。

 最初に取り上げるのはデュカスの交響曲。この人の作品で最も知られているのは「魔法使いの弟子」だろう。生涯で1つだけとなった交響曲はその前年に書かれたものである。印象としては同じ作家とは思えないほど古典的で堅固な構成だが、その中に華やかな響きを併せ持った作品で、演奏機会はそれほど多くはないが佳品である。

 最後にクイズ。地図の最上部にDomine Quo Vadis ? とあるのは何を意味しているだろうか。地図に疑問符が印刷されるなど他で聞いたこともない。「主よ、何処へ」を意味するこのラテン語、実はそのまま小さな教会の名前であるが、なるほどあるべき所に位置している。意味深長なこの言葉を数行で説明するのは無理なので、気になる方は検索してください。
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